※社内メールマガジンに書いた文章を修正したものです
技術開発の仕事をしていたころ、技術ネタ出しや課題解決のアイデア出しのために「ブレーンストーミングをしよう」ということになったことが何度もありました。
ところが、やった結果として「ああ、今日はブレーンストーミングをしたなあ、アイデアを出したなあ」という感触を持てたことは一度もありませんでした。いつも途中から普通の議論になってしまい、アイデアをどんどん出す場にならないのです。今思うと、全くブレーンストーミングではありませんでした。
ブレーンストーミングの歴史は古く、考案されたのは1950年代です。ルールはその頃から変わっていないようで、以下の4つの原則があります。
- 批判厳禁(判断延期): 評価・判断はブレーンストーミングが終わってから
- 自由奔放: 突飛なアイデア大歓迎
- 質より量: よいアイデアを出すより、たくさん出す
- 便乗歓迎: 他の人のアイデアにどんどん乗せる
まずは議論せずに徹底的に発散させること、それらの相互作用でさらにアイデアを出していくことを意図して定められたルールですが、これらは普段仕事を進める時の常識とは大きく異なっています。
私たちは、人が何か言ったらすぐにそれを評価・判断するように訓練されていますし、突飛なことを言って場を乱したりしないのが大人です。また質の低いものをたくさん出すのは効率が悪い・恥ずかしいと思うのが普通ですし、他人の尻馬に乗ったアイデアを出すのはよくないという倫理観を持っています。
ですから、単に「たくさんアイデアを出そう」ぐらいの気持ちで始めても、すぐに普段の調子に戻ってしまいます。
ではどうすればいいか? みんなが意識的に普段と違うモードになるように気持ちを向けることが何よりも重要です。
そのための場づくりとして「特別感」「非日常感」を出すのは効果的です。たとえば
- 会議とは独立に「ブレーンストーミング」とか「発散」というタイトルの時間枠を設けて実施する
- いつもと違うメンバーを入れる(アイデアの多様性という意味でもgood)
- いつもと違う場所で行う
- 全員が立って行う
- いつもと違う格好をする (会社にあるものでいうと、たとえば安全ヘルメットをかぶるとか軍手をはめるとか…)
などなど、普段の会議と明確に異なる場にすればやりやすくなります。最後のはプチコスプレ。状況が許すなら効果抜群だと思います。 明確に違うことをやらなくても、「いいですか、ここからはモードを変えますよ」と宣言するだけでも変化があるでしょう。
私が実施しているアイデア出しワークショップでは、全員に立ってポストイットとペンを持ってもらい、雰囲気を盛り上げるために音楽をかけてブレーンストーミングをしています。
せっかくブレーンストーミングをやるなら、気持ちの枠をはずしてめいっぱい発散させ、アイデアの吟味はあとでゆっくりやるようにしたいものです。