全脳組織開発帳

企業で人と組織の力を引き出す仕事をする中で学んだこと、感じたこと

チェックインの話

※社内メールマガジンに書いた文章を修正したものです

今回のお題は「チェックイン」です。といっても、ホテルや空港の話ではありません。

対話の場やワークショップ、あるいは普通の会議を進行する時でも、最初に「チェックイン」の時間をなるべくとるようにしています。これ、おすすめです。やり方は様々ですが、その時感じていることを何でもいいので一人ずつ全員から短く話してもらう、ということが多いです。知らない人同士の場だと、同時に自己紹介をしてもらうこともあります。

このチェックイン、何のためにやるのでしょう?

「一言ずつ話すことによって全員が発言しやすくするため」「メンバーの状態を共有して関わりやすくするため」「遅れた人が来るまでの時間つなぎ(?)」など、いろんな目的があるのですが、一番の目的は「『今ここ』に集中していくため」だと思います。

前の会議のことが頭に残っている、今日作らないといけない資料が気になる… など、誰もが何らかのしがらみを抱えてそこに集まっていますし、なんとなく気分が乗らないということもあるでしょう。そんなとき、みんなの前で今の気持ちを口に出して共有すると、少し「今ここ」の場に入っていきやすくなります。「今ここ」に入っていくのは、たとえて言えば、剣道や柔道の道場に入る時に一礼する時の感覚です。

チェックインの時に話すことは、「今ここ」に入っていくために出してみたいと思ったことなら何でもいいのです。立派なことを言う必要はありませんし、本題に関係のないことでもかまいません。「さっきかかってきた電話が気になっています」でも「冷やし担々麺が食べられたので満足してます」でもいいですし、「本当はこんなところに出ている場合じゃないのにと思っています」というのもアリです。

会議の最初にみんなで「チェックイン」をしてみましょう。一言ずつならそれほど時間はかかりません。自分の中に何があるのかを「チェック」して、「今ここ」に「イン」していくために必要だと感じたことを口に出してみましょう。

ついでに書きますと、その後も「今ここ」にい続けるためのコツの1つとして「できるだけデジタル機器を使わないこと」があります。PCやスマートフォンは画面の向こう側に別の「世界」を持っているので、たとえ内職をしていなくても、使っているとついついその世界に入ってしまって「今ここ」にいにくくなります。車の運転中に携帯電話を使うと運転がおろそかになる(→法律で禁止されている)のと同じ理屈です。

といっても、資料を参照したり映したり、メモをとったりするために使わなければならないことは多いわけですが、話をする場では漫然とPCを開いておかずに、必要のない間は閉じる、スマートフォンは取り出さない、ということを心がけてみてはいかがでしょうか。

愛のある好奇心

私がコーアクティブ・コーチングの講座に通い始めたのは、2010年6月のことでした。

最初の基礎コースを受ける前に、「コーチング・バイブル」(当時は第2版)を読みました。内容はよくわからないことが多かったのですが、コーチングをするには人に対する「好奇心」(「5つの資質」の1つ)が大事だと書いてあったのが特に印象に残りました。私は自分のことを、人に対する好奇心を人一倍持っている人間だと思っていましたので、その点には自信を持ってコースに臨みました。

コーチングを実際に学び体験し始めてみると、好奇心というのは本当に大事な肝だということがわかってきて、めいっぱい好奇心を発揮してコーチングをやろうと思うようになりました。

一方、コースの中でクライアントとしてコーチングを受ける中で「あなたが何を大切にして生きているのか?」という問いを投げかけられることがあり、それに対して「愛と叡智です」と答えるようになっていました。愛と叡智。これらは今でも自分の根幹にあると感じています。2つともなくてはならないもの。どちらが欠けてもダメ。右脳・左脳統合ということにもつながる2つの要素です。

講座は応用コースに進み、その最後の3日間。その中でのあるワークで、私に対して同じ参加者の一人から投げられた言葉が深く突き刺さりました。

「『叡智』はわかったけど、『愛』が見えない!」

この時はコーチングをしていたわけではなかったのですが、「叡智」に比べて、私の言う「愛」がどんなものかよくわからない、あまり出てきていない、というコメントだったのです。

それについて考えているうちに、気づいたのです。

「自分の好奇心には『愛』が足りない」

私が「人一倍持っている」と思っていた好奇心は、人に対する好奇心ではなく、物に対する好奇心と同じでした。たとえば機械を見て「どうやって動くんだろう? 中身はどうなってるんだろう?」というような好奇心。

いや、同じではありません。けっして人を物と同じように見ていたわけではないのです。でも、人に対する時の好奇心はもっと違うものでなければ。愛のある好奇心を持たなければならない。そう感じました。コーチングで大事な好奇心は、人に対する好奇心、愛のある好奇心なのです。

以来、「愛のある好奇心」はずっと私のテーマになっています。コーチングをする時だけでなく、複数の人の集まる場をリード/ファシリテートする時、さらに言えば普通に人と会話する時でも、愛のある好奇心を持つ、というか、自分の中からそれを出してくるようにすること。終わりのないテーマです。